ウィークリーレポート(2023年5月19日)

5月第第3週は日経平均株価が+4.83%の大幅高、NYダウ+0.38%、ユーロストックス50+1.79%も上昇となりました。

前週までに引き続き、日経平均株価は週間で1420円の大幅高となった一方、6月限P25000が前週末10円から一時17円まで上昇するという異常事態も発生しました。週を通しての一方的な株価上昇に伴い、(コール)オプション売り投資家の大規模なショートカバーといった様相で、同様のケースは2017年9月の衆院選に伴う株価上昇でも見られましたが、OTMプットオプションまで幅広く上昇するのは2013年のアベノミクス依頼の珍事となりました。
日経VI指数は5/19金曜日には高値22.48ptをつけてその後前日比マイナスとなる20.07ptまで下落。オプション売り方によるショートカバーは一巡した感があり、来週以降は上昇しても上げからはマイルドになるかと思われます。

ショートカバーを巻き起こした背景は先月から続いている海外投資家の買いです。対内証券投資の非居住者による株式取得金額(ネット)の推移をみると、コロナショックで減らした日本株投資を急速に買い戻しているように見えます。コロナショック前2019年の水準まで買い戻すならば5/15時点で1.2兆円の買い余力があり、ここ2年のデータからは、海外投資家の買い1000億円に対して日経平均が約174円上がっており、1.2兆円の買いで2088円のインパクト、5/15の株価から31476円が上昇の目途に見えます。
上昇が一服しても、この手のラリーはすぐに下落に転じることは少なく、昨年末の欧州株のラリーは小幅な下落を挟みながらいまだ緩やかな上昇を継続しています。バリュエーション面では、過去の予想PERのレンジからは上限34365円となり、1990年6月の33,344円も地合いの良さが続くなら無理のないターゲットに見えます。

前週のレポートで取り上げた米国債務上限問題は、5/18木曜日夜には合意への道筋で進展ありと報道され、ひとまずの懸念は和らいだと米国株式市場が反応したものの、翌5/19金曜日には共和党議員が退席し交渉が一時中断するなど、ドタバタ劇を繰り広げています。最終的には合意するものと思いますが、期日の6/1に向けてヘッドライン相場の度合いが強くなるかもしれませんが、しかしながら、S&P500先物の売り建玉を考えると下値は限定的と思えます。

(Bloomberg) 米債務上限問題、下院議長と民主上院首脳は6月1日前の採決視野
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-18/RUUYM0T0AFB401

(Bloomberg) 米債務交渉、週末も継続へ-共和党退席でいったん中断後に再開
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-19/RUWVVHT0AFB401

週明けのトレードアイデアでは、日本株買いの需給相場で跳ねあがったボラティリティの売りを考えたいところです。海外勢の買いがどこまで続くか不明瞭な点からアップサイドリスクの方が高そうですので、ストラドル売りよりはプット売り戦略がよさそうです。


 本資料は、情報提供のみを目的として作成したもので、いかなる有価証券等の売買の勧誘を目的としたものではありません。また、一般的あるいは特定の投資助言 を行うものでもありません。本資料は、信頼できると判断した情報源から入手した情報・データ等をもとに作成しておりますが、これらの情報・データ等また本資料の内容の正確性、適時性、完全性等を保証するものではありません。情報が不完全な場合または要約されている場合もあります。本資料に掲載されたデー タ・統計等のうち作成者・出所が明記されていないものは、当社により作成されたものです。本資料に掲載された見解や予測は、本資料作成時のものであり予告 なしに変更されます。運用方針・資産配分等は、参考情報であり予告なしに変更されます。過去の実績は将来の成果を予測あるいは保証するものではありません。
光世証券株式会社
金融商品取引業者 近畿財務局長(金商)第14号 加入協会/日本証券業協会

ウィークリーレポート(2023年5月12日)

5月第第2週は、日経平均+0.79%、NYダウ▲1.11%、ユーロストックス50▲0.52%とまりました。

5/10に発表されたCPIは前年比4.9%と市場予想通りの結果となり無事通過となりました。次回のCPI発表は6/13と、FOMC(6/15)と同じ週になりますが、それまでの約1か月間は目立った経済指標の発表が無く、米国の債務上限問題に注目が集まる可能性があります。
与野党の合意なき場合、米国債のデフォルトは6/1にも訪れるといわれおり、もし仮に米国債がデフォルトした場合は、世界中の取引所(クリアリングハウス)へ担保として預けられている米国債の価値をめぐって、リーマンブラザーズ破綻以上の大騒ぎとなります。とはいえ、さすがに政治的パフォーマンスのために核兵器級ともいえる爆弾で自爆はしないだろうということで、株式市場ではデフォルト確率を真剣に織り込んでいる様子はありません。

2011年、2013年、2015年とこれまで何度も繰り返してきたいつもの政治ショーといった感じですが、2011年8月にはS&Pによる米国債格下げもあり、NYダウは直前の高値から約15%の下落となりました。また、債務上限問題ではありませんが、同じく米国のねじれ議会の紛糾で2018年12月には予算案の合意が得られず政府機関の閉鎖となり、こちらもNYダウは15%安となりました。いずれも一過性の下落と言え、また、現在のS&P500の水準から15%下は昨年10月の安値水準、つまり、昨年のレンジの範囲内とも言えますので、過度の警戒は要らず、むしろ押し目買いのチャンスに思えます(もちろんまさかのデフォルトした場合は別ですが)。

ダウンサイドの話が続きましたが、メインシナリオとしては引き続き、「最後の利上げは買い」の上昇シナリオを想定しています。S&P500に関しては依然として投機筋のポジションが375,825枚(前週比+ 21,081枚)と大量のショートに偏って残っており、下値をトライするには無理がありそうです。
海外勢の買いで独歩高の様相を示している日本株に関しては、昨年12月から欧州株が買われていたケースが連想されます。当時のユーロストックス50は予想PERで割安に放置されており、それが一気に、ヒストリカルな平均値まで買い戻された形でした。
日経平均も欧州株ほどではないものの割安ゾーンにあったため、ひとまず平均へ回帰していくのではと推測できます。予想PERの過去の平均値から計算した水準30,122円が上昇の目途になるのではないかと思います。

(NRI)デフォルトの「Xデー」は6月1日にも
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2023/fis/kiuchi/0509

(Bloomberg) 米国債の支払いは継続か、「Xデー」後の場合のイエレン長官の選択肢
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-12/RUINPPDWRGG001


 本資料は、情報提供のみを目的として作成したもので、いかなる有価証券等の売買の勧誘を目的としたものではありません。また、一般的あるいは特定の投資助言 を行うものでもありません。本資料は、信頼できると判断した情報源から入手した情報・データ等をもとに作成しておりますが、これらの情報・データ等また本資料の内容の正確性、適時性、完全性等を保証するものではありません。情報が不完全な場合または要約されている場合もあります。本資料に掲載されたデー タ・統計等のうち作成者・出所が明記されていないものは、当社により作成されたものです。本資料に掲載された見解や予測は、本資料作成時のものであり予告 なしに変更されます。運用方針・資産配分等は、参考情報であり予告なしに変更されます。過去の実績は将来の成果を予測あるいは保証するものではありません。
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ウィークリーレポート(2023年5月5日)

5月第1週は、日経平均+1.04%、NYダウ▲1.24%、ユーロストックス50▲0.43%となりました。
日本市場がゴールデンウイーク連休中の5/4早朝に発表されたFOMCでは25bpの利上げを決定し、その後パウエル議長による会見では利上げ停止が示唆されましたが、ファーストリパブリック銀行の破綻救済からの連想でパックウェスト銀行やウェスタン・アライアンス銀行株価が急落しているなか、利下げの手がかりがなかったことからかNY株式市場は下落となりました。

一方で、5/5(金)に発表された雇用統計では非農業部門雇用者数が市場予想+185Kに対して+253Kと政策金利高止まりを示唆したパウエル議長の発言を裏付ける非常に強い数値がでましたが、NYダウは546ドルの大幅高となり、ちぐはぐな反応を示しいています。需給面ではS&P500ミニ先物の投機筋建玉がコロナショック時を超える35万枚の売り越しとなっておりショートカバーの圧力が強い状況です。
また、金曜日の上昇でNYダウ、S&P500はダブルボトムの形を作ったこともあり、連休明けの相場は上昇が期待できそうです。5月言えばSell in Mayが意識されますが、上述のショートポジションの解消までは下値の堅い展開となりそうです。

連休中の海外市況は結局、FOMC前後で下落し雇用統計で上昇といってこいの展開となったため、金曜日NY時間引けの水準で計算すると、月曜日の日経平均は87円安とほぼ変わらずのスタートとなりそうです。指数ベースではほぼ変わらずですが、セクター別にみると、米国S&P500銀行株指数は地方銀行の財務状況不安から前週比▲4.59%と大きく下落しており、日本市場でもこの影響が出るかもしれません。しかしながら、日本では米国のように政策金利を引き上げているわけではないため地方銀行のポートフォリオ懸念の心配は少なく、また、3月のシリコンバレー銀行破綻時の日本の銀行株連れ安は結局ちょうどいい押し目となったこと、さらに、東証のPBR1倍割れ改革の流れもあり、今回も三菱UFJ(8306)など銀行株を拾うチャンスかもしれません。


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ウィークリーレポート(2023年4月28日)

4月第最終週は、日経平均+1.02%、NYダウ+0.86%、ユーロストックス50▲1.12%とまりました
4/28の日銀政策決定会合ではすべて現状維持となったものの、「1年から1年半程度の時間をかけて」ここ四半世紀の金融緩和の影響を検証すると書かれており、少なくとも1年間の政策変更はなしとの思惑から株価は上昇しました。夕刻の植田新総裁の記者会見では、物価目標達成ならばレヴュー期間中に政策変更はあり得ると発言があり、やや上値は重くなりましたが無風と言える範囲でしたので、マーケットは新総裁とその政策をハト派として受け止めたようです。

(日銀)当面の金融政策運営について
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k230428a.pdf

日銀の次は5/4のFOMCとなります。「最後の利上げは買い」というのがアノマリーとして意識されます。1994年以降の過去のパターンでは、S&P500平均で5%の上昇となっており、昨年8月高値4340ptまでの上昇が考えられます。同様に、各セクターでの過去の平均推移を並べてみると、利上げ後50営業程度はITセクター、半導体セクターが強く、その後は、金融、不動産セクターがけん引していることがわかります。

一方、FRB最後の利上げ前後の同じタイミングで日経平均の推移を比べると、米国とは打って変わって右肩下がりのチャートになります。偶然か必然か、「最後の利上げ」のタイミングで1997年アジア通貨危機、2006年量的緩和解除など、マーケットにネガティブなイベントが重なっていることが要因です。
FRBがまず利上げ、その後欧州、日銀と引き締めが続くケースが多かったことから、FRBの引き締め最終局面で日銀が緩和から舵を切るというパターンも2006年当時と似ていますが、植田新総裁が緩和継続を続けるならば、「今回は違う」となるかもしれません。
東証33業種の比較チャートでは、全体的に下落傾向ですが、不動産業がもっともパフォーマンスがよいです。
日米ともに共通している点ですが、「最後の利上げ」後の長期金利低下に伴いREIT指数が上昇していますので、ゴールデンウイーク(FOMC)明けの上昇を見込んでREIT指数の買いがよさそうです。

日経新聞では1970年代から80年代の高インフレ時の最後の利上げ後の株価動向から、最後の利上げは買いではない可能性を報じました。しかしながら当時は、FOMCの開催の有無に関わらず、非開催日にも政策金利を変更していた時代であり、また、1979年からのボルカー総裁からは政策金利ではなくマネーサプライをターゲットとしたことから、マーケットが当時の政策金利の引き上げが最後なのか予見できない時代だったと言えます。高インフレ時代という共通点はありますが、当時と現在では政策変更の予見性という点では大きな隔たりがあります。
政策金利の変更がFOMCの開催と一致し始め、また、フォワードガイダンスの重要性が認識されてきた1994年以降のデータでは、やはり、最後の利上げは買いと言えます。

(日経)米国株「最後の利上げ、買いでない」著名ストラテジスト
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2488K0U3A420C2000000/


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ウィークリーレポート(2023年4月21日)

4月第3週は、日経平均+0.25%、NYダウ▲0.23%、ユーロストックス50+0.41%とまちまちな展開でした。
木曜日に発表された4月第2週の投資部門別売買動向では、海外勢が現物先物合わせて1兆5902億円の大幅買い越しとなりました。第3週も東証立会中は日本株が独歩高する場面が見られ、前週に続き買いが入っている様子でした。週間ではTOPIXバリュー指数が1.15%と同グロース指数の0.47%を上回っており、東証のPBR1倍割れ企業への改革姿勢が評価されているのかもしれません。

週明けは月末最終週となりますが、月末の4/28には植田新総裁の下での初めての日銀政策決定会合が開催されます。前年、米国の金利高の格差の拡大からYCC撤廃期待が台頭し、国債市場は大荒れ、黒田総裁退任後の会合で政策変更の期待もありましたが、植田新総裁は2月の所信表明でYCCを支持し、国債購入の正当性を訴えるなど国債市場の鎮静化を図ってきました。
その2月の所信表明時に大問題と言及した、日銀によるETF購入に関しては、その後言及はなく、またマーケットでもフォーカスされていないためノーガードな状態に見えます。
海外勢が大幅に買い越している間は売り向かっても報われる可能性が低いですが、仮にこの流れが変わるとすれば、日銀によるETFの購入停止サプライズが考えられます。ETF購入停止となるならば日本株式市場のボラティリティ上昇が見込まれますので、ゴールデンウイーク前の宝くじ感覚でプット買いというのも面白いかもしれません。

そのゴールデンウイーク中の5/4にはFOMCが開催され、日本市場では5/3から連休に入ることもあり(5/1、5/2は営業日)警戒感から手掛けにくい展開となりそうです。
4/14のミシガン大期待インフレ率の上振れ以降、マーケットは5月FOMC後、6月にも1回の利上げあるのではないかと見込んでおり、5月FOMC後の会見がハト派な内容ならアップサイドの動きが期待されます。
日米の金融政策で織り込む方向がづれているように見えますので、ダウ買い/日経売りのチャンスかもしれません。

2023.4.18 (Bloomberg)物価・賃金上昇に良い芽、緩和継続で物価目標達成近付く-日銀総裁
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-04-18/RTAC0IT0AFB401

2023.3.1 (DIAMOND online)日銀総裁候補・植田和男氏の言う「大問題」について考える
https://diamond.jp/articles/-/318600


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