要約
- 4月8日現在、NYダウは過去の暴落パターンを踏襲
- 今後の展開は、V字回復よりも2~3年の緩やかな回復局面をメインシナリオとして想定
- 回復局面では、ハイイールド債・コモディティから回復、その後REIT・株が続く
- 投資もよいが、まずは健康第一
新型コロナウィルスの世界的感染爆発によって生じた金融市場の混乱は、NYダウの下落率で3月16日に歴代4位となる▲12.93%記録するなど、まさに歴史的な暴落といえるものでした。昨年末から4月8日時点までのNYダウの株価をみると、確かに、2008年リーマンショック、1987年ブラックマンデー、1929年世界恐慌、1914年の第一次世界大戦時の暴落と似通った価格推移をしています(図1)。
図1. 暴落時のNYダウ推移(2020年1月17日の株価で基準化)
暴落の時はいつも似た形で株価は下がっていきますが、より長くスパンを取ると、暴落後の株価推移はいくつかのパターンに分かれます(図2)。
- ひたすら下落が続く世界恐慌パターン
- 高値奪回まで2~3年を費やす2009年パターン
- 1年程度で高値を取り返すV字回復の第一次世界大戦後のパターン
図2. 暴落後のNYダウ推移(2020年1月17日の株価で基準化)
世界恐慌パターンについて
1929年当時、世界各国は金本位制を取っており信用緩和が出来なかったことから資産価格の暴落を止められませんでした。2020年の現代では、FRB、ECB、日銀と主要中央銀行は大量の量的緩和に舵を切っていることから、同様のケースが生じる可能性は非常に低いと考えます。
V字回復パターンについて
1月23日に封鎖された武漢市は4月8日に封鎖が解除され、また、3月9日から封鎖に踏み切ったイタリアも5月4日から段階的な封鎖解除を検討と報じられるなど、概ね2か月程度の都市封鎖でパンデミックは終わるのではないかと希望が見えてきました。
米国は経済対策で最大2兆ドル、日本も経済支援で108兆円の巨額支出を計画しており、仮に2カ月で都市封鎖が終わるならばお釣りがくるような支出にも見え、今後のV字回復の期待が高まります。
しかし、1918年から流行したスペイン風邪(インフルエンザ)は、一度収束したあと、第2波、第3波と流行が来ました。今後、都市封鎖の解除後に、第2波が訪れ、再度封鎖に踏み切る可能性もあります。また、航空会社やボーイングなど、今回のパンデミックによって深手を負った巨大企業も多く、これら企業の債務にまつわる信用不安もこれから発生するものと考えられることから、V字回復は楽観的過ぎる期待と言えます。
スペイン風邪流行中の1918年は株価は上がらず、流行の収まった1919年からNYダウは騰勢を強め、1年で30%上昇しています(その後、第一次世界大戦後の戦後不況を経てバブルへ)。
根拠のある数値ではありませんが、直感的に、世界恐慌パターン 5%、緩慢な回復パターン 75%、 V字回復パターン 20%の確率を想定し、2009年パターンをメインシナリオに据えたいところです。
2009年パターンについて
2020年第1四半期の各種アセットの騰落率を見ると、原油価格が▲66%、米国債は+8%と、リーマンショックが発生した2008年第4四半期と非常に近い値になっています。リーマンブラザーズ破綻後の2009年第1四半期では、米国ハイイールド債、金、原油の価格上昇が最も大きく、続く2009年第2四半期に株、REITが反発しました。2020年第2四半期には3月期企業の本決算発表および今期の予想があり、足元の混乱状況では業績予想も織り込みにくく、株は買いにくいことから、2009年と同様にまずはハイイールド、コモディティから上昇するものと考えられます。
コモディティに関する上場商品では【1671】原油ETFや【1540】金ETFならば、当社でオプションも取引できますので、ターゲットバイイングなど高ボラティリティを利用したトレードも可能です。
株式への投資なら、2020年第3四半期からがよさそうですが、株価の予想変動率を示す日経VI指数は40.53と高水準にあり、今後も乱高下が予想されます。株価の乱高下に付き合わされるのは嫌だが、2020年の企業業績は悪い/2021年から回復する、というざっくりとした見通しで取引したいのでしたら、日経配当指数先物を利用するのも手です。
足元ではボラタイルな値動きが続きますが、2022年頃には株価は再び高値圏まで回復すると期待します。
(JPX)日経平均・配当指数先物
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ここまで相場について書き連ねてきましたが、現在、日本は緊急事態宣言下にある状況ですので、優先順位として、一に自身の健康、二に自身の仕事、三に投資、ということで、まずは手洗いうがい、マスク着用を忘れないようにしましょう。