今週、ニューヨークダウは史上初の30,000ドルの大台を突破しました。日経平均も26,000円の大台を29年ぶりに回復しており、世界的に株高が進行しています。一方、実体経済の景気回復はコロナ禍以前の水準にすら達しておらず、実体経済から乖離した株高へ疑問は尽きません。
(Reuters) 焦点:ダウ史上初の3万ドル突破、投資家からは冷静な声
https://jp.reuters.com/article/us-stock-investor-idJPKBN2843FO
背景にはFRB、日銀といった中央銀行の強力な金融緩和による金余りがあるとされますが、そのような環境の中、市場価格はワクチン開発後の景気回復期待、アフターコロナのDX躍進などいいところばかりを織り込もうとしています。
そこで、ひとまず、上述の「いいとこどり」をした場合にどの程度のバリューションになるかを考えてみました。
日経平均採用銘柄のうち、当期予想EPS、来期予想EPS、2018年度~2019年度実績EPSの4か年のうち、最も高いEPSを採用して、日経平均のEPSを算出してみます。
ヤマトHDなどコロナ禍で恩恵を受け業績を伸ばしている企業は来期予想EPSが高いのでこれを採用し、逆にANAのようにコロナ禍で大きな打撃を受けた企業は新型コロナによる影響が出る前の2018年度の利益を採用して計算しました。
片方ではアフターコロナでの新常態を織り込んでおり、もう片方ではコロナ禍以前のインバウンドブームを織り込んでおり、そもそも矛盾してる前提になりますが、現実には市場は両方を織り込むかのような動きをしています。
これらのEPSをもとに指数算出ベースで日経平均のEPSを求めると、1677円という数値になります。
11/25時点の株価に当てはめるとPER15.31倍となり、過去の平均値16.11倍より割安な水準です。アベノミクス以降の傾向としては、予想PERの+1標準偏差水準で株価は頭打ちとなり調整する傾向が続いていますが、上述のEPSをもとに+1標準偏差水準の株価を計算すると30,488円となります。
「いいとこどり」を目一杯織り込んだEPSでは日経平均の上値目途は30,000円超となり、ダウに続いて日経平均も30,000円達成の目途が見えてきます。
とは言え、繰り返しになりますが、そもそもEPS 1677円の算出根拠自体が非常に乱暴で矛盾したものであり信憑性に欠けるます。しかし、相場格言には強気相場はこういった懐疑の中で育つとありますので、よもやありえる話かとも思われ悩ましいところです。
”強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観と共に成熟し、幸福のうちに消えて行く”
NYダウ30,000ドル達成や日経平均29年ぶり高値のニュースを見ると、今後の株価動向が気になるわけですが、気になる気持ちの裏には、このまま株価が上昇するのを、指を咥えて見ているだけなのは惜しいという心理があります。一方で、実体経済を考えるとこんな高値では気持ちよく買えず、今年3月のような暴落が脳裏をよぎります。
こういう状況では、素直に株が上がるか下がるかという点にのみ集中せず、デリバティブを使って損益曲線を変えて立ち回るとうまく行きそうです。
米国シカゴ・オプション取引所(CBOE)では、カバード・コールやカラー取引などさまざまなオプション戦略の指数を開発して指標を公表しています。その中に、S&P500 5%プット・プロテクション指数というものがあります。これは、S&P500を買い、5%安の水準のプット・オプションを買うというポートフォリオを毎月継続していった場合のパフォーマンス指数となります。
詳しい説明は下記CBOEのHPで確認できます。
(CBOE) The CBOE S&P 500 5% Put Protection Index (PPUT)
https://www.cboe.com/publish/micropdf/CBOE-SP500-Put-Protection-PPUT-Methodology-Paper.pdf
この指数はプット・オプションを毎月購入するため、長期的には支払いプレミアム分だけS&P500指数に劣後します。しかし、2019年末を100として年初来でパフォーマンスを比べると、プット・プロテクション戦略はS&P500指数を15pt以上上回っています。プット・オプションによるリスクヘッジが功を奏し、3月暴落を軽微な損失に抑えられた上、その後の回復局面で株価上昇の恩恵を受けた結果、S&P500指数よりもリターンが高い結果となりました。
再び日経平均の話に戻りますが、もしこのまま30,000円まで上昇するなら株を買いたい、しかし、暴落は嫌だという今の状態を考えると、プット・プロテクション戦略による投資が最も心理的に安心できる投資です。