これまで株価の上昇をけん引してきた半導体関連株が世界的に調整に入っています。押し目を買うか否か、迷うところです。ここでは、これまでの上昇要因と今後の見通しを示します。
これまでの上昇要因
半導体需要の高まりの要因は、スマートフォンの高性能化なども挙げられますが、一番の要因とみられるのはサーバー向けのSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)の需要の増加です。
サーバーというのは簡略化して言うと、プログラムを置いておき、常時ウェブにつなげられる場所です。例えば、ウェブサイトをご覧になられるとき、その情報はサーバーに置かれています。そしてそのサーバーは常時稼働しており、いつ、ウェブサイトにアクセスしても閲覧できる状態になっています。
例えば、その情報をPCに置いていて、ウェブサイトを開設しようとすると、常時そのPCを付けておかなければなくなりますが、サーバーにお金をいくらか支払っておくと、ウェブサイトを常時稼働させることが出来ます。
SSDとは記録媒体のことです。皆さんがPCやスマホを使われる際に、写真を保存したり、文章を保存するのが記録媒体です。そして、これまでその記録に多く使われていたのがHDD(ハード・ディスク・ドライブ)でした。HDDは磁気ディスクを高速に回転させ、データを書き込みます。HDDは大容量で安価なのですが、読み書きに時間がかかり、ディスクを回転させて読み込むため衝撃に弱く、動作音も大きくなります。
一方でSSDは不揮発性半導体メモリです。不揮発性というのは電源を供給しなくても保存できる意味で、つまり、電源を切っても記録したことを忘れないということです。不揮発性半導体メモリは大容量化がなかなかできませんでしたが、これまで平らにしか並べられなかったものを縦にも積み重ねることが行われ、大容量化、書き込み速度の向上、省電力化に優れたものが作られました。それが3DNANDフラッシュと呼ばれます。
容量当たりの価格は依然として高いのですが、データの読み書きが早く、消費電力が少ないということで、サーバーをSSDに切り替える向きが多くなり、需要が高まっているというのが、足元の需要増の要因のようです。
それに加えて、人工知能・機械学習やVR、ブロックチェーンなど高いコンピューティング力を必要とする技術の発展も要因です。これらに共通することとして、GPUを活用するという点です。GPUは元々、映像を映し出すためのみに使われていました。
これまで、PCによる演算と言えばCPUだったのですが、同時に計算を行える回数が少ないため、人工知能の演算などに非常に時間がかかっていました。そこでコア数が多いGPUを使って計算してしまったら早いということで、GPUも併用されるようになりました。
また、ここのところよく名前が聞かれるビットコインなどのブロックチェーンもGPUによる計算により維持されており、ニーズが高まっています。
このような技術の変化により半導体へのニーズが高まり、関連株価が強くなったと言えます。問題は今後も需要が継続するのかでしょう。
今後の見通し
半導体の需要見通しに関して、WORLD SEMICONDUCTOR TRADE STATISTICS(以下WSTS)の2017年春季半導体市場予測会議の予想を見てみます(値は6月6日発表)。
世界の半導体市場の成長率は2015年‐0.2%、2016年+1.1%、2017年(以降予想値)+11.5%、2018年+2.7%、2019年‐0.2%となっています。
この数値を見ると成長率のピークは今年であり、来年以降、市場の成長率は減速する見通しです。足元、投資家は市場の拡大は今年までと見て、利食い売りを出していることが分かります。
ここから、半導体関連は多少のリバウンドを見せることはあれ、この見通しの認識を変えるような材料がない限り、半導体関連銘柄が上昇トレンドに戻るとは考えにくいと見られます。
逆に、そのような材料が出た場合(例えば受注が一段と伸びるなど)の、反発は大きくなるため、決算発表時の受注数値などを上手く活用したいところです。
参考資料
GMOクラウドアカデミー SSDはなぜ高い?ディスクについて(後編)
https://academy.gmocloud.com/know/20150518/613
Tintri 3DNANDフラッシュとは
http://tintri.co.jp/article/3d-nand
メモリの大革命 3次元NANDフラッシュ
http://success-int.co.jp/pdf/article_04.pdf
日経テクノロジーonline
2016年の半導体業界を振り返り、2017年を占う
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/280894/121500016/
WSTS2017年春季半導体市場予測について(2017年6月6日(火)プレスリリース分)
http://www.jeita.or.jp/japanese/stat/wsts/docs/20170606WSTS.pdf
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